五福星

第３３回（最終回）

おやじがとうとう開き直りました。

すると、いつものように酔っぱらっているおとっつぁんが少し酔い覚めしたような顔つきで言いました。
「そうがぁ、おまえもついに自分が悪いってこと認めたか～。よし、よし。これでよぉ、おまえさ損害賠償払わねくてよくなったな。な、おかあさん！」
「あら、そう言えばそうだわねえ。このバカ息子、自分の出来が悪いことの原因を親に押しつけようとしてたからねえ、出来が悪い分損害賠償よこせなんて、よくも言ってくれてたわよね。オホホホホホホホホ･･･」

このおやじの父母の会話を真顔で聞いていた姑が言いました。
「へえ～～。じゃあ、うちでも損害賠償もらおうかね。いや、そっちのおとうさんとおかあさんからじゃないよ。そこのデブからだよ。だってさ、うちのカワイイ一人娘強奪したんだからさ、大学まで出した娘をなんで中卒のデブにやらなきゃいけないんだよっ！」
姑の本音が炸裂しました。
「え？大体さ、子供一人大学まで出すのに一体いくらかかったって思う？うんとアタマよくて国立にでも入ってくれたなら少しは費用も減っただろうけど、あいにくそこまでの出来じゃないからさ、でも、そこのデブとは段違いだからね。そんな娘を勝手に連れてったんだから、損害賠償もらったっていいんだよね。イヒヒヒヒヒヒヒ･･･」

あまりに間の抜けた話の展開にかみさんがうんざりしながら言いました。
「あのね、私はまーくんの良さを理解して結婚したの。今さら学歴持ち出して何だっていうのよ。それに、そのまーくんのバカな理屈を利用してお金取ろうだなんて、私、やっぱりそんな人の所から逃げ出してよかった！」

「アレ～～？？？」
コバヤシが首を本当にかしげました。
「ナンダベヤ、ニンゲンテ、ホントニバガナンデネエベガ（訳：ばかじゃないだろうか）。カネノハナシニナット、ウワキノギワクモセイベツモ、ドウデモイインダナ。ヤンダ、ヤンダ。オラ、イヌデヨガッタナ。ソノヘンサウンコシテモテキトウニユルシテモラエルシナ。モシモオヤジガソノヘンサウンコシタラ、オヤジガゴミニダサレルダゲダベダガラナ（訳：ゴミに出されるだけだろうからな）。ソレニヨ、オヤジガオカマカラカリテキタジデンシャノニオイデオカマノイエガワガッタッツウオラノハナノヨサニハキガツカネエシ、トンデモネエカイヌシダナ。
ダゲントナ～、イマガラサイシュウショクッツウノモナカナカキビシイシナ、マア、シカタネエカラコノヘンデテヲウットクシカネエガ･･･。アメカゼシノイデナンモシネエデクッテケルコトハクッテケルカラナ。ニンゲンガドウセソンナモンナラ、オラダヂイヌモソレナリニシテレバイイダケダカラナ」

コバヤシが心の中でこんなことをつぶやいているとは夢にも思わない人間どもは、ついさっきまでの敵味方がごちゃごちゃになってしまい、結局一体この騒ぎは何だったんだという結末になってしまいました。

あれから１０年、いや１５年、おやじもかみさんもいい加減にホンモノのおじさん＆おばさんになり、当のコバヤシも他界してしまいました。今はコバヤシMK2がいる五福星ですが、やはり開業当時の苦労をじっと見つめていたコバヤシは五福星の看板にふさわしい犬でした。パグ好きのおやじとかみさんは、コバヤシがMK3になろうとMK4になろうとパグを飼い続けるでしょう。でも、水戸黄門じゃありませんが、やっぱり初代のインパクトは不滅です。

笑うコバヤシ！

完

お初！コバヤシＭＫ２です！

おやじとかみさんのとこにはこんなモンしか来ないんですヨ。

氏名がここに入ります。

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