五福星

第１５回

用を足したコバヤシはホッとしましたが、さて困った。もしもおっかさんに見つかったら物凄く叱られるに決まっているのです。
「ナジョスッペ？（どうしよう）」
コバヤシは何とか床の間から逃げようと思いましたが、先にも書いた通り、床の間には来客からの手土産が山積み、おまけに小林先生や他の人たちの荷物が置いてあって、いくら小さなコバヤシでも簡単には外に出られないのです。
コバヤシは少しの間困っていましたが、それでもやっと運が向いてきたようです。
お弟子さんの一人が客人に頼まれて、床の間の前に置いてあったバッグを１つ、お客のもとへ持って行ったのです。すると、そこには１５センチばかりの隙間ができました。
コバヤシはすぐにでも出て行こうと思いました。が、すぐに思い止まりました。なぜなら、床の間にはコバヤシが出入りできるだけの隙間ができたものの、部屋の出入り口は閉まったままで、結局のところ、部屋の外へは逃げ出すことができないのです。顔に比べて頭のよいコバヤシは、もう少しだけ辛抱して、部屋の戸が開くのを待っていました。
そして、待つこと数分、絶妙のタイミングで寿司屋が昼の弁当を配達に来ました。おっかさんに言われて、お弟子さんたちが何人か出入りして、寿司折りを運ぶために部屋の戸を開けっ放しにしたのです。この何分かの間にコバヤシは無事に脱出することができました。

さて、ここでごく普通に考えた場合の疑問が生じます。それは、どうして誰もコバヤシが部屋を出て行くのに気づかなかったかということです。その理由は簡単。皆、謙遜に見せかけた自画自賛とお世辞に熱中して、辺りの出来事に気づく余裕がなかったのです。

そんなわけで無事におっかさんの仕事部屋から出てきたコバヤシでしたが、悲しいかな犬の習性。今度は玄関いっぱいに並んでいる草履に目が行ってしまいました。そして、一番高そうな草履を選ぶと（なぜ一番高そうなのを選んだかといえば、それは革製だったからです。つまり、犬のコバヤシの鼻を一番刺激したということです。ちなみに、新年のお弾き初め会には、いつもなら足の裏の臭い人でも新品かあまり履いていない物を履いてきます。よって、この場合、足の裏の臭いはアウトオブクエスチョンということです！）、鼻緒をくわえて噛み噛み、カミカミし始めました。

それから数分、鼻緒はコバヤシの歯形とヨダレでグチャグチャになっていました。
と、そこへ、なぜかおやじが帰ってきました。おやじは忘れ物を取りに来たのです。
おやじがコバヤシに向かって言いました。
「何や、コバヤシ。おめえ、客の草履食っちまったのが？ありゃ～。なじょすっぺ？困ったなや～。まあ、犬だがら、仕方ねえっつえば仕方ねえんだげんとも、だげんと、おふくろ、赦さねえべなぁ」
おやじはちょっと立ち止まっ考えていましたが、すぐに中に入って忘れ物を持ってくると、玄関でまたカミカミしているコバヤシに向かって言いました。
「おい、おめえ、おれと一緒に来っか？猫のいる家だがら中さは入れねえげんと、車の中でおとなしく待ってんだったら連れで行くど」
おやじのこの誘いに、退屈していたコバヤシはすぐに乗りました。おやじは短い尻尾を振って喜ぶコバヤシを抱き上げ、逃げるように立ち去りました。

そして、その頃、２階では、ちょっとした大きな悲劇が･･･。

氏名がここに入ります。

プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。プロフィールやメッセージがここに入ります。