五福星

～～～　今だから言おうか、ホントの話　～～～

現在五福星でお客様に提供しております麺は、五福星店舗の手前にある掘っ建て小屋で作っている自家製麺であります。自家製と言えば聞こえはいいですが、もちろん最初から自家製麺だったわけではありません。

２０数年前の五福星開店当初は、麺の専門メーカーさんからもらった麺の種類一覧表を見て、何だかよくわからないので、適当に選んだ麺でありました。嗚呼～～！何せ、福島県は郡山市にある親戚経営のラーメン店（林家木久蔵－今、木久翁がウマイと言ってくれて地元で有名になったラーメン屋です）で一年ほど適当に修行しただけで飛び出したおやじですから、本当のことをバラしてしまえば、ラーメンの味の作り方さえわかっていなかったのです。当時できたことと言えば、餃子の皮を作ることぐらい。というのも、そればっかり親戚の店でやっていたから。ま、要するに、おやじはなかなか一人前とは認めてもらえないために、肝心のラーメン作りのノウハウを伝授してもらえなかったというわけであります。

そんなおやじがおとっつぁんにお金を出してもらって開店したのが、あの木町通りにあった屋台に毛の生えたような店でした。あと一週間で開店という時になっても、まだ味ができないと大騒ぎしていたのです。それでも、かみさんが仙台のタウン情報誌を作っている会社に勤めていた関係もあって、地元のマスコミにネタ不足の時に利用していただいて、変な味でも何とかかんとか営業が成り立つようになったのでありました。これ、ひとえにかみさんの人脈のおかげ。とはいっても、もともと変な料理好きだったおやじでございますから、そのうちに少しずつ自分の個性を味に出せるようになって、さらには世の中に物好きな御仁が結構たくさんいてくださったおかげで五福星も一丁前のツラができるようになったというのが、実態であります。

そんないい加減なおやじが麺を自分で作ることを思い立ったのにはある事情がありました。それまでずっと麺を注文していたメーカーさんの事情で、麺の品質が一定しなくなってしまったのです。その時によって出来が違うために、いつもと同じように作っていても同じようにできない。ま、おやじの性質により近い麺になってしまったわけですが、これでは商売としては失格です。そこでさすがのいい加減おやじも困ってしまい、ついには自分で麺を打つ決心をしたのでありました。

ところが、今度は麺の打ち方がわかりません。そこでおやじは、人から教えられた自家製麺使用のラーメン屋さんの門を叩きました。実際そこの麺はおいしかったそうで、おやじも色気を出したというわけであります。そして、そのお店の親方さんに麺打ちを習うことになりましたが、臨時休業が得意とはいえ、いつも臨時休業しているわけではありませんでしたから、自分の店を閉めてから夜間に車を２時間ほど飛ばして親方の所へ行って習うという、ちょっと聞きでは大変に熱心そうな勉強ぶりでした。しかしっ、考えてもごらんなせえ。
真夜中に麺打ちを習いにくる人相の悪いデブのために自分も寝る時間を減らして付き合ってくださった親方のご厚情、これこそが今の五福星の麺の基本中の基本なのです。それに、食用のシルクがあることを教えてくれたのもその親方だったのです。

しかし、人というのは都合のいいもので、まあ、この辺のことはおやじに限ったことではないかもしれませんが、おやじもまたすべてが自分の力で成りなっているような勘違いを起こしてしまったのであります。マスコミにも取り上げられるし、取り巻きの皆さんからはそこそこチヤホヤしていただけるし・・・。しかし、人というものはそういう時に大失態を犯すものであります。すでにご存じの方も少なくなく、またテレビでもドラマ仕立てで紹介されましたが、おやじは麺打ちの最中に自分の右手まで打ってしまったのです。お医者さんに手術でいったんは手をくっつけてもらいましたが、でも、やはり現実は甘くはありません。一度取れてしまった手が壊死してしまい、結局は肩から右手丸ごと失いました。この時おやじが言った言葉は、「バチが当たった」でした。そして、誰に忠告されても心を入れ替えられなかったおやじが、少し大人になったというのでしょうか、わずかですが、人としての成長の兆しを見せたのです。言ってみれば、おやじの大好きな沖縄の教訓茶碗（入るお酒の量がちょうどいいとこぼれないけれど、多すぎると全部底から流れだしてしまう不思議な茶碗）の教えを地でいったような人生になったのです。

最後に、なぜ「ひねくれ麺」かということだけ、ご説明いたしやす。理由は簡単です。麺がまっすぐでないでしょ？だから、ひねくれ麺です。まあ、おやじの性格にもひねくれたところがあるんだげんと・・・。

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