五福星

第２６回

そのころおやじは何をしていたかと言うと、いつものようにパチンコ三昧。アホウなおやじですが、パチンコとかヨーヨーは子供のころから得意です。なぜパチンコまで子供のころから得意かと言えば、それはおとっつぁんがパチンコ台を購入して、おやじにおもちゃとして与えていたからです（注：おやじの子供のころ、ちょっと田舎のほうのバイパスなどの道端には古くなったパチンコ台を売る露店がよくあったものです）。

さて、気の済むまでパチンコを堪能したおやじは、かみさんにエサを与えるがごとく、カップラーメンやスナック菓子を景品としてしこたまゲットして、ようやく家に戻ってきました。ところが、いつもなら駐車場に置いてあるはずの中古のクラウンがありません。おやじは普段は自分はクラウンに乗り、かみさんには中古の軽自動車を与えていたのですが、なぜか今日はかみさんはクラウンに乗って出かけたようなのです。アパートの隣の部屋の人から自転車を借りてパチンコに行っていたおやじは、景品の一部を御礼として隣人に渡すと、急いで自分の家の中に入りました。

「あれや？コバヤシもいねえど。なんだべや～、何してんだべ、あいづ、なんでおれの車さ乗ってったんだ？」

節約家のかみさんが軽を置いてクラウンに乗って出かけたということ自体、過去にはないケースだったので、本当ならこの時に少しは異変に気づけばよかったのですが、自分のことしか見えないおやじは特に深く考えることもなく、夜の営業のために五福星へ出かけました。

店に着いてみると、ひょっとして来ているかもしれないと思っていたかみさんの姿はありません。
「何やってんだべ。もう店開げねくてねえのに、来たらぶっ飛ばしてやっと！」
おやじは一人で息巻きながら準備にいそしんでいましたが、かみさんはなかなかやってきません。
「何やってんだ。ちくしょー！あのバガ。赦さねえど！」
怒ったおやじはかみさんのいそうな場所に片っ端から電話しましたが、つかまりません。
「何だ、バカヤロー！」
けれども、そのうちだんだんと心配になってきました。
「事故にでも遭ったんでねえべが？」
おやじはおっかさんにも電話をしてみましたが、「知らない」とつれなく切られてしまいました。
「あれや～？まさかあの婆さんのとごさ行ぐわげねえげんと、んでも、一応はかげてみっか」
おやじはとうとう天敵の姑にも電話しました。すると、姑は
「あら、そうなの？フン！あんた、うちの娘を大事にしないから、外に男でも作って逃げたんじゃないの？え？コバヤシも一緒？そんなの知ったことかっ！」
ガシャン！

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