五福星

第２１回

急にゾクゾクし始めたかみさんは、コバヤシを小脇にかかえると、一目散に家へ駆け戻りました。

家に帰ってみると、パチンコ屋に行っていたはずのおやじが戻ってきていました。そして、おんぼろのこたつテーブルの上にはなぜか大量のカップラーメンが･･･。

「何、それ？」
「何それって何や？カップラーメンに決まってっぺ？」
「どっから持ってきたの？」
「どっから持ってきたのでねえべ。パチンコの景品や」
「え゛?」
「えでねえべ。おめえのためにわざわざ取ってきたんでねえが」
「なんで？」
「なんででねえべ？おめえが全然料理できねえがら、おれの留守中に飢え死にすっと気の毒だと思って、わざわざカップ麺にしたんだべ。おれのおめえに対する思いやりだど。こんな親切な亭主持って幸せだべ？感謝しろ！」

確かにかみさんは料理が大の苦手です。おやじなんぞと結婚したのも、一つにはおやじの料理好きがあったからなのです。しかし、それにしても、おやじは本当にパチンコの景品としてもらってきたものなのでしょうか。

かみさんは不安気に尋ねました。

「ねえ、正直に行ってよ。それ、本当にパチンコの景品なの？もしかして、どっかの倉庫に無断で入って無断でもらってきてしまったとかって･･･」
「何や、それ。それって、まるでおれが泥棒したみてえでねえが」
「ん゛～～～。だって、前科があるし･･･」
「何や、おめえ。おれの親戚の言うごど真に受けてんのが？」

ここまで来て、かみさんはそれ以上遠い過去の過ちを追求するのはやめました。なぜって、こういう話になると、おやじの屁理屈が止まらなくなるからです。それよりも、今大切なのは、なぜコバヤシが近所のマンションの階段の下に入り込んだかということです。

「ねえ、ちょっと、あたしさぁ、今コバヤシ連れて散歩行ってきたんだけど、どうしてだか知らないけど、コバヤシがこの先のちょっと奥まったとこにあるマンションに入っていきたがるんだよ」
「何言ってんのや、コバヤシは犬だど。犬なんかあっちこっちうろうろするに決まってっぺ。いい年こいでほだごどもわがんねえのが？」
「なんであんたはいちいちそういう突っかかった言い方すんのかな。その件に関しては今日は置いといてやるけど、とにかくね、コバヤシのそのマンションへの侵入の仕方ってのがね、尋常じゃないんだよ。鼻クンクンさせながら強引に引っ張って行くんだよ。まるで前にも来たことのある場所に隠しておいた宝物でも掘り出しにいくような、そんな感じなんだよ」
「そのマンションて、あっちの川のほうのが？それとも、こっちの路地の奥のほうのが？」
「なんでそんなにあの辺のこと詳しいのよ！まさかコバの散歩のふりして物色して歩いてるんじゃないよね」
「何言ってんのや、おめえ、アホでねえが？」

と、ここまで言ったところで、おやじが急に何かを思い出したように黙ってしまいました。

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