五福星

第２８回

「あんた、ちょっと、今、何ってった？」
「何って、何や？おれが何か悪いごどでも言ったが？」
「悪いなんて言ってないけど、変なこと言ったでしょっ？」
オカマという言葉に過剰反応したおっかさんががなり立てました。
「んだがら、オカマが何だっつうの、オカマが。あの婆さんがオカマかっつったんだべ？んだげんと、オカマのわけねえべ。婆ァなんだがらや」
「そういうこと言ってんじゃないのっ。あんた、このバカ息子っ！お母さんはね、あんたに人を外見で判断しちゃいけないって教えたけど、だけど、オカマと付き合えなんて言ってないからねっ！オカマは見た目は女のような格好してるかもしれないけど、所詮、男なんだからねっ！ホントにっ、ああ゛～、我が息子ながら気持ち悪い～～～。ギョェホホホホホホホ・・・」
おっかさんが泣いてんだか笑ってんだか、それとも吐きそうなのか、何だかよくわからん変な声を発して嘆き始めました。
「はあ～～？おふくろ、あんだ、もうモウロクし始めたのが？まだ早えべ。モウロクすんなら、もっとマシな生き方してからにしろ」
「何言ってんの、このバカ息子！あんたこそモウロクしてるんじゃないのっ！え？女房がある身でオカマと浮気するなんて！」

「はあ～～？」
おやじはこの時、何だか知らないけど話が変な方向に行ってしまっていることに初めて気づきました。

「おふくろ、あんだだぢ、一体何考えてんのや？おれがオカマと浮気しだだと？まあ、確かによ、国分町でナンパすっかど思って声かげでみだら男だったっつうのはあったけどや、ほだごどただの笑い話だべ？おれはや、どうせ浮気すんならオカマなんて相手にしねえど。やっぱりや、いい女でねえとダメだな」

「そうだ、そうだ。その通りっ！おれらにも人権てものがあるがらな、雑食はしねえんだ！」
酔っぱらっているおとっつぁんが身勝手な内容の合いの手を入れました。しかし、こういう場合、通常であれば「親父、余計な口出しすんな」と文句を言うはずのおやじでしたが、浮気の共感となると話は別らしくて、「うんうん」とうなづいています。さっきまでのかみさん探しはどうなってしまったのでしょうか。

おっかさんがたまらず言いました。
「ちょっと、あんたたち、いい加減にしなさいよ。酔っぱらいはともかくも、特にこのバカ息子！女房に逃げられて泣きべそかいてるくせして、よくもそんな話できるもんだっ！」
おやじは反論しました。
「何やっ、おふくろっ。あんたがおれがオカマと浮気したなんでわけのわがんねえごど言うからだべや。おれはほだ趣味ねえっつうごどを強調してくて言っただげでねえが。したら、親父が勝手にしゃべりだしただげだべ？おふくろ、文句言う相手が違うど。早くモウロクしてぐねがったら、もっと頭使って生きてみろ」

と、おやじがまたしても毒づいたところでドアのチャイムが鳴りました。

ピンポ～～～ン、ピンピンポ～ン！ピンポ～～～ン、ピンピンポ～ン！

「ごめんくださいっ！誰かいるの?いるに決まってんでしょ？早く出てきなさいよっ！」
おやじの天敵、姑でした。

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